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お知らせ

京都新聞1月3日付朝刊に山田京都府知事との対談記事が掲載されました

2015年01月03日

新ドメイン「.kyoto」で京都ブランドを発信

対談 京都府知事 山田啓二 × 長谷川亘 京都情報大学院大学・京都コンピュータ学院統括理事長,京都府情報産業協会会長

「京都発」を証明できるドメインが誕生,「.kyoto=京都ドメイン」!

長谷川トップレベルドメイン「.kyoto」がいよいよ始動します。トップレベルドメインとは,インターネット上の住所(アドレス)であるURLのうち,末尾の「.jp」「.com」などの文字の並びのことです。このほど地理的名称を使ったドメインが世界中で生まれることになりました。「.kyoto」は,サイバースペース(コンピューターのネットワークの中でさまざまな情報が行き交う仮想空間)における京都のまち,いわば「サイバー京都」の誕生を意味します。2012年に京都府から支持をいただき,一般社団法人 京都府情報産業協会メンバーの京都コンピュータ学院,京都情報大学院大学などKCGグループが設立した「サイバー京都研究所」が,この「.kyoto」の管理運営事業(レジストリ)を任されることになりました。

山田特定の地域のドメインをつくるには地方公共団体の支持書が必要で,京都府では約3年前に有識者による審査委員会をつくり,管理運営事業者を公募しました。KCGグループが選ばれたのは,IT分野での長年の実績を基に京都におけるドメイン活用の積極的な構想を持たれていたことが高く評価されたからと,公共性のある学校法人であることからでした。

長谷川トップレベルドメインは新たに世界中で2千ほど誕生しますが,大学・教育機関が管理運営を担当する地理的名称トップレベルドメインは世界で「.kyoto」のみです。米国のトップレベルドメイン「.edu」「.mil」「.go」は,ユーザーがそれぞれ教育,軍,政府関係に限定されますが,その他大勢が使える「.com」などが世界中に広まると,発信される情報は玉石混交になり,中にはアダルトや「フィッシング詐欺」などのサイトも登場しています。「.jp」などもその流れの中で玉石混交になってしまいました。そこで「.kyoto」はユーザーを京都府にゆかりのある法人,団体,個人に限定します。例えば茶道の裏千家は「urasenke.kyoto」に。「.kyoto」はインターネット上で,世界中のコンピューターが,「京都ブランドの京都発信の情報だ」と証明するわけです。

山田従来の一般のドメインは誰でも取れるので,いわば無法地帯であり,そこに安心を確保された「.kyoto」が生まれることは大きな意義があります。世界的に有名な古都・京都は,日本文化の育まれた場所として高い評価とブランド性を持っており,地域経済の大きな原動力にもなっています。もしそれが損なわれることになれば京都全体の大きな損失になりますから,「.kyoto」が京都の品格,文化性を体現するようサイバー京都研究所には力を注いでいただきたいし,京都府としてもしっかり連携しなければと考えています。サイバー京都研究所は,府が先端的な研究拠点づくりに向けて取り組んでいる「けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)」(旧私のしごと館)の第1号の入居者にも認定されました。IT環境を活用した教育とその重要性を確立する研究開発に大いに期待しています。

仮想空間と現実空間の交差で生まれる新しい京都

長谷川本学では,「.kyoto」事業は大学の社会教育の一環として実施します。ユーザーにはインターネット上で受講できる「eラーニング」で,ITの基本的な知識から最先端情報まで定期的に配信していきます。「.kyoto」を通じて,京都府全体のIT化が高度に進むのではないかと思っています。映画「マトリックス」ではサイバースペースに人間が入っていきましたが,すでに人間の意識の中でインターネットは重要な一部分を占めており,ネット社会という言葉も生まれています。このたびの「サイバー京都」では最初にルールをきちんと定め,サイバーとリアルのスペースが表裏一体となる新しい「京都」を目指しています。例えば京都の百貨店のサイト「○○.kyoto」でリアルの店は8階建てでも,サイバーの店は100階建ても可能。さらにこのURLをバーコードや二次元コードなどにして入り口や各売り場に貼り,携帯電話やスマートフォンで在庫が調べられる仕組みにすれば,リアルとサイバー両方の商品がその場で分かる。ストリートドメイン,例えば「kawaramachi.kyoto」で,河原町通にあるお店や企業の情報に歩きながらアクセスできるようにする。ドメインを通じて京都のまちが高度にインターネット化されます。ありとあらゆる現実の事物とインターネットがリンクする「IoT(Internet of Things)」が高度に実現すれば,京都にかなりの経済効果が出ます。このような試みはまだ世界のどこにもありません。ぜひ知事には「サイバー京都」の知事にもなっていただきたいと思っています。

山田インターネットという仮想空間と現実空間との交差によって,今までにない新しい京都が生まれます。それだけに安心できる運営と体制が欠かせませんね。「.kyoto」の責務は重く,もし苦情が寄せられればその対応も迅速に行う必要があります。ドメインの信用性が問われる時代において,京都府も効果の生まれる「.kyoto」になるようしっかり支援していきたいと思います。

倫理規範を逸脱するサイトは排除

長谷川苦情が起こりやすいものとして,間違いやすい文字列のドメインが考えられます。実際に,京都のある企業と一字違いの「.comドメイン」が中国にあるのですが,その京都企業の商品とよく似た商品を並べている。このような「一字違いの大違い」があふれているのは,ドメインのコントロールを政府や管理業者がしなかったから。「.kyoto」はそういった紛らわしいドメインや有害・違法サイトは排除します。私どもは教育機関ですから,有害・違法サイトはもちろん,倫理規範を逸脱するものに対して強くノーと言える。ここに学校法人・大学が管理者となる強みがあります。

山田闇市状態から,セレクトショップに。真偽不明の情報から高度な信頼情報に。インターネットの世界で「.kyoto」がこれからの京都に大きな安心と可能性をもたらしてくれます。「.kyoto」を中心とした新しい京都づくりを,オール京都で盛り上げていきたいですね。

長谷川ありがとうございます。「.kyoto」によって世界の中で唯一の,現実社会のまちである京都とサイバースペースの京都とが表裏一体となった新しい未来都市「京都」が出現し得ると思います。この理想を実現するために,京都府民の皆さまのご理解とご協力を賜りたく存じます。

山田啓二

やまだ・けいじ

東京大法学部卒業後,自治省(現総務省)に入省。内閣法制局参事官などを経て,99年に京都府総務部長。2001年に京都府副知事。02年京都府知事に初当選。現在4期目。11年4月から全 国知事会会長を務める。

 長谷川亘

はせがわ・わたる

早稲田大卒。米国コロンビア大教育大学院卒業。京都情報大学院大教授・理事長,一般社団法人 京都府情報産業協会会長。2013年から一般社団法人 全国地域情報産業団体連合会(ANIA)の会長も務める。

2015年1月3日 京都新聞(PDF)