SIG(Schools on Internet Governance)Japanの2025年度第1回セミナーが5月29日(木),京都情報大学院大学(KCGI)京都駅前サテライト・京都コンピュータ学院(KCG)京都駅前校6階大ホールで開催されました。テーマは「メディア・リテラシーと青少年の安心・安全」。講師にはTikTokのTrust and Safety部門でGlobal Head of Youth Safety and Wellbeing Policyを務めるEmma Leiken氏を米国ニューヨークから迎えました。
TikTok Japanが2025年1月から参画している,総務省が推進する官民連携プロジェクト「DIGITAL POSITIVE ACTION」とも連携して開催された本セミナーは,地域や言語の壁を越えて利用されるインターネット・メディアをテーマにしていることから,相互理解を深められるようKCGIサイバー京都研究所(CKL)の田中恵子助教(KCGI)が通訳を担当し,日本語と英語のバイリンガル形式で実施されました。京都という地域で学ぶ専門学校生,大学生,大学院生をはじめ,さまざまな言語的・文化的背景を持つ若者が参加し,SNSやプラットフォームをめぐる課題と向き合う開かれた学びの場となりました。
Leiken氏は冒頭で,自身のキャリアパスを紹介。リベラルアーツや宗教学を学んだ学部時代から,ロンドンで国際開発を学び,テクノロジー分野,さらには政策領域へと関心を広げていった歩みは,多様な背景を持つ学生に強い共感と刺激を与える内容でした。テクノロジーによって若者をエンパワーすることに熱意を持ち,社会課題に向き合いながら領域を横断してきた経験は,これから進路を模索する参加者にとって大きなインスピレーションとなりました。
今回のセミナーに先立ち,参加者を対象にプラットフォームやSNSの利用実態やそれに対する意識についてアンケートを実施しました。アンケートでは,現在多くの若者がTikTokをはじめとするプラットフォームやSNSを日常的に利用していることが明らかになり,その利用目的は「友人や家族とのつながり」「娯楽やリラックス」「自己表現・創造性の発揮」に加え,「社会課題への意識向上」「キャリアや学習の機会」など多岐にわたることが分かりました。一方で,「個人情報を出しすぎること」「オンラインいじめ」「依存や過度な使用」などへの懸念も示され,若者たちはプラットフォームに対して,プライバシー設定,安全な使い方に関する教育コンテンツ,年齢に応じた制限機能などの対応を強く期待していることが明らかになりました。
こうした背景を踏まえて行われたLeiken氏の講演では,TikTokにおける青少年向けの安全ポリシーの基本方針「Protect(守る)」「Empower(力を与える)」「Learn(学ぶ)」を軸に,年齢に応じた機能の設計,安全ガイドライン,地域の文化や言語に配慮した情報提供などの実践が紹介されました。保護者とアカウントを連携できるペアレンタルコントロール機能や,いじめを防ぐための設計上の工夫など,具体的な対策の紹介に対して参加者から高い関心が寄せられました。
さらに,Leiken氏は現在一部地域で提供が開始されている「STEM Feed」という新たな試みも紹介しました。STEMはScience(科学),Technology(技術),Engineering(工学),Mathematics(数学)の頭文字を取ったもので,STEM Feedはこうした分野に関する質の高い教育コンテンツに青少年が気軽にアクセスできるようにするための仕組みです。TikTok上でSTEMに関連した動画をまとめて閲覧できる専用のフィードを提供するもので,学習意欲の高い若者を支援し,教育的な側面からもプラットフォームの活用を広げようとする取り組みです(※本機能は現時点では日本では未提供)。これは,アンケートで多くの学生が挙げた「教育的・有益な情報へのアクセスを高めたい」という期待にも応えるものとして注目を集めました。
また,セッション後半ではTikTokのTrust & Safetyチーム・パートナーシップ・マネージャーのヤンスヨン氏より国内におけるデジタルリテラシー向上のための取り組みが紹介され,総務省が推進する「DIGITAL POSITIVE ACTION」に賛同し,若者が安心・安全にデジタル社会に参加できる環境づくりの必要性が改めて共有されました。
SIG Japanは,今後も学生や若者の声を反映しながら,インターネット・ガバナンスに関する理解を深めるセミナーやイベントを継続して開催していく予定です。SIG Japanは,CKLが活動をサポートしています。